2025年6月24日

Labubu × POP MART ── 医療コンサルCEOが読む “感情設計ビジネス” の勝ちパターン
はじめに ── なぜ医療コンサルがフィギュア戦略を分析するのか?
「Labubu(ラブブ)」というキャラクターをご存じでしょうか?
中国の玩具メーカーPOP MARTが展開するフィギュアブランドの中で、いま世界的に熱狂を生んでいる存在です。
可愛らしい見た目の人形に見えて、その背後には――
“感情を設計し、売上を最大化する” 極めて洗練されたビジネスロジックが隠されています。
私たちElish Visionでは、医療経営・事業設計の支援を行っていますが、
医療の未来を考えるうえで最も重要なのは、「人の行動をどう設計するか」
つまり、Labubu戦略に含まれる手法や構造は、患者や生活者の心理設計・サービス体験づくりにもそのまま活かせるのです。
この記事では、Labubu戦略の全貌を、初心者にもわかりやすく、かつ深く解説しながら、
医療や他ビジネスにも役立つ「構造的な学び」を引き出していきます。
1. いま何が起きているのか?── Labubu旋風の実態
Labubuは「The Monsters」というキャラクターシリーズの一体で、
世界中でフィギュア・ぬいぐるみ・限定グッズなどが販売されています。

その人気ぶりをデータで見てみましょう。

売上の2割以上が1つのキャラクターに依存しています。
これは“人気の証”であると同時に、“依存リスク”の裏返しでもあると言えるでしょう。
2. Labubu戦略を分解する ── 5つの仕掛け
Labubuがここまで売れ続けているのは、キャラの可愛さだけではありません。
“行動心理”と“情報設計”を掛け合わせた販売戦略が、精密に組まれているからです。
以下に代表的な5つの仕掛けと、それが意味することを分かりやすく解説します。
☑️① 中身が見えない“ブラインドボックス”方式
中にどのキャラが入っているか分からない“福袋”形式。
レアキャラの出現確率が低く(例:144個に1個)、
「次こそは当てたい!」という期待で何度も買ってしまう。
安価な商品が“ギャンブル的体験”として再購入を促進する仕掛け。
▶ 医療で応用するなら:「来院時に何か特典がもらえる」など、“ワクワク体験”を設計すれば行動を促せる。
※倫理配慮が必須
小児へのワクチン接種のご褒美として簡単なものをあげるのは効果的でしょう。
☑️② “在庫切れ”を演出して希少性を維持
「すぐ売り切れた!」「なかなか買えない!」という状況を意図的に作り、SNSで話題に。
一度欠品してから再販売すると、購買意欲が高まる。
企業は広告費を抑えつつ、自然な拡散と購入を生み出せる。
☑️③ セレブやインフルエンサーの“自然な発信”
BLACKPINKのLisaやDua Lipaらが、日常的にLabubuをSNSに登場させたことで爆発的に拡散。
企業が“広告として頼んだ”のではなく、“使ってたら映ってた”から信頼性が高い。
▶ 医療で応用するなら:ドクターや専門家が自然に取り上げることで、病院やサービスの価値が伝わりやすくなる。
☑️④ 店舗・自販機・アプリの連動=どこでも買える仕組み
中国国内では2,000台以上のフィギュア自販機が稼働。
スマホで購入 → すぐ受け取り、という「待たないUX」を実現。
▶ 医療で応用するなら:オンライン問診 → 薬の自販機や受け取り → 院内滞在最小限 など、“手間ゼロ医療”の導線が作れる。
海外でのスマートロッカー例
☑️⑤ 地域限定モデルで“旅行=購買”をリンク
パリ限定カラー、ドバイ版Labubuなど、「その土地に行かなきゃ手に入らない」仕組みを導入。
結果、“旅行ついで”に購買意欲が刺激される。
フランスでの数量限定モデル

3. 注意点とリスクも大きい
Labubu戦略には驚くべき成果がある一方で、いくつかの構造的なリスクも見えてきます。
規制リスク:中国では「未成年のギャンブル性が高い」として政府が警告 → 株価下落も。
IP依存リスク:売上の22%以上がLabubu → 一つのキャラに依存しすぎている。
模倣・偽物問題:人気すぎてコピー商品が出回り、正規ブランドの価値が毀損される恐れ。
実際、タイなどの多くの国で偽物が売られています。
4. まとめ ── 学べること・考えるべきこと
Labubuというキャラクター戦略から、私たちが学べるのは以下のような本質です:
・人は“商品”ではなく“体験”にお金を払う
・サプライズや限定性は購買行動を加速させる
・SNSとリアルをつなげる導線が、ブランドの生命線になる
・同時に「熱狂」は“構造的なリスク”を抱えている
今後もこのブログでは、経営者視点で最新トレンドや社会の動きを読み解きながら、その構造を深く掘り下げていきます。
一見、医療とは無関係に思えるテーマもあるかもしれません。
しかし、私たちの暮らしに最も近く、最も影響を受けやすいのが“医療”という領域です。
Elish Visionは、「構造と思考の力」で医療の未来をデザインする会社として、
これからも、視野の広い示唆と実践知を届けてまいります。
参考資料:
McMillan Doolittle|The Rise of Pop Mart and the Labubu Craze
P.S. 実地観察メモ(原宿POP MART店舗にて)
先日、原宿のPOP MART × HARAJUKU店の前を通過した際の写真を共有します。


現地は平日の夕方にも関わらず人が絶えず、店外まで列ができている状態でした。
原宿店の“アートウォール×ライブ感×IP演出”は、確実に“通りすがりを足止めするUX設計”になっています。
執筆:Elish Vision 代表 北垣遼