2025年6月27日

なぜ「揚げた小麦粉」に人は2時間並ぶのか?
── “I’m donut?” が示す、体験消費×感情設計のビジネス戦略
1. 現象整理 ── ドーナツが“おやつ”から“体験”になった日
中目黒・表参道・渋谷・原宿……Z世代が集う都市中心部に集中出店
どの店も連日完売、各店で毎日3000個以上のドーナツを販売
TikTokやInstagramで“並ぶ”映像や“ぷるぷる感”がバズり、1つ300〜600円のドーナツに2時間の列!
つまり、「買う」「並ぶ」「映す」「語る」までを含めて商品になっている。
2. パン業界のビジネス状況 ── 安定的微増と構造課題
そもそも、今パン屋業界はアツいのか?
パン業界全体を俯瞰すると、市場規模は横ばいから微増で推移しています。2023年時点で約1.53兆円となり、2028年度には約1.89兆円にまで成長すると予測されています。しかし、その安定成長の裏側では、原材料の高騰や後継者不足、事業承継問題が業界の共通課題となっています。
特に最近のトレンドとして、惣菜パンや機能性の高いパンといった高付加価値商品が伸びています。消費者は単にパンを「食べる」以上の体験や価値を求め、コンビニおにぎりのような手軽さや便利さをパンにも求めるようになっています。こうした状況は、店舗間の差別化やM&Aを含む経営再編を促しており、業界全体が新たな局面に入っています。
こうした背景から、「ただのパン屋」では生き残れない時代となりました。ここで、平子良太氏が手掛ける『I’m donut?』の戦略がなぜ注目を浴びているのか、そのブランドの構造に踏み込んでいきます。
3. なぜim donut?はここまで刺さったのか?── “平子式ブランド構造”を読む
パン職人ではなく、元イタリアンシェフ・平子良太氏(40)が手がけるこのブランド。
彼の感性が「商品×空間×人の動き」すべてに埋め込まれている。

パンの味のみならず、そこに辿り着くまでの体験を非常に重視されているのが読み取れます。
これこそが”10分で食べ終わるパンの為に2時間待っても満足度の高い”構造なのです。
4. 他業種への応用:顧客体験のリアリティある設計
『I’m donut?』の成功要因を他業種で活用する場合、顧客体験の設計における以下のポイントがリアリティのあるヒントになります。
顧客の視覚的満足度を高める
商品やサービスの魅力を「見える化」し、購入前の期待感を高める工夫を施す。飲食店なら調理工程をオープンキッチンで見せるなど。
空間と体験の連続性をデザインする
商品やサービス提供までの導線を心地よく、ストレスのない形で設計することで顧客満足度を高める。
感情の巻き込みを重視する
顧客がサービスを受けるプロセスの中で、自分が特別な存在だと感じられる仕掛けを作る。例えば、名前を覚えて呼ぶなどの小さな工夫が顧客の帰属意識を向上させる。
無理に全ての業種に適用する必要はありませんが、顧客が感じる価値を細部までデザインし、体験を価値の中心に置くという視点は、あらゆるサービス業にとって重要な示唆となるでしょう。
5. 総括 ── ドーナツの真ん中が空洞でもビジネスモデルには中身が詰まっている🍩
『I’m donut?』の成功の秘訣は、「揚げた小麦粉」の枠を超えた緻密な体験デザインにあります。行列に並ぶ期待感、商品の選択や提供される体験、そしてSNSでの共有まで、すべてがブランド価値を形成しています。
ビジネスで本当に重要なのは「何を売るか」ではなく、「どう買ってもらうか」です。
私たちElish Visionは、このような「顧客体験」の再設計を軸に、ビジネスの価値を最大化する戦略を提供します。
参考:
Business Insider
今後もElish Visionでは、「構造で読むトレンド」を継続発信していきます。
店舗、医療、地方創生──テーマを横断し、あなたのビジネスに役立つ“視座の武器”を届けます。